ムン・ジェイン政権が「自分たちの意のままになるもうひとつの検察」を作ろうと必死になる理由

【寄稿】往年の韓国民主化闘士たちがつくる恐怖の公捜処(朝鮮日報)

 高位公職者犯罪捜査処(公捜処)という名前を聞くだけでもぞっとする。権威主義時代が連想されるからだ。あの時代は、恐ろしい「化け物」が多かった。合同捜査本部、革命検察部、革命裁判所、非常軍法会議、南山(中央情報部〈KCIA〉)6局、南営洞分室、ビンゴハウスなど。彼らが現れたと聞くと、山川草木がおののいた。

 いわゆる「進歩」真っ盛りの季節にいささか声の大きい人々も、当時、あの「化け物」たちにひどくやられたことがある。ところがそんな人々も、権力を握ると、ある日突然「公捜処」をつくりたいという。国家情報院(韓国の情報機関)や機務司令部(韓国軍の情報部隊)を無力化した「民主闘士」でありながら、自分たちも「何のけん制も受けない」閻魔大王省をつくりたいというのだから、世の中は本当に変わったわけではなく、巡り巡っているらしい。
(中略)

 この過激化はあらゆる群衆革命、紅衛兵革命、永久革命の宿命なのかもしれない。1789年にフランスでひとたび群衆革命の火ぶたが切られるや、事態は日増しに過激になり、ジャコバン派の独裁へと向かった。ロシア革命のときも、ケレンスキーによる自由主義の期間はボルシェビキ革命の独裁で急転直下、飲み込まれてしまった。「アラブの春」でも、エジプトのムバラク政権が倒れるや、事態は急速にイスラム原理主義の手中へと落ちた。

 韓国でも、民主化が群集の直接行動と「広場権力」で実現したことで、「ろうそく」が偶像と化した。「ろうそく」初期に押し流されていた市民が引き揚げたところへ、韓国版ジャコバン派が入ってきたのではないだろうか。そして公捜処は、彼らの過激な考えを執行する「ジャコバン派の公安委員会」に相当するものではないだろうか。蔚山地裁の金泰圭(キム・テギュ)部長判事はこうただした。「警察、検事、判事が公捜処に膝を屈したら、けん制はおろか、一目にらむということもできるだろうか」。司法が「運動」の侍女となったら、それも恣意(しい)的支配だ。また別の権威主義が、また別の民主化運動を呼ぶ時代だ。

(引用ここまで)

 高位公職者犯罪捜査処かぁ……。
 当初、この組織の設立が企図されたのは20年ほど前。金泳三政権の頃。
 皇帝的ともされる韓国の大統領権限に対して対抗するための組織を立ち上げようとしていたものです。
 全斗煥や盧泰愚について捜査するために強大な組織が必要とされたのでしょう。
 実際には設立されずに、以降の政権でも同じような組織が設立されるような話はちらほらと出ていたのですが、それぞれで立ち消えになっていたというのが実情。

 その高位公職者犯罪捜査処がムン・ジェイン政権では本格的に設立されそうだ、という話ですね。
 ちょっと調べたのですが大統領に当選した2017年あたりから設立の意思を強力に推し進めてきたようです。
 独自の捜査権、独自の逮捕権、独自の公判維持権を持たせる。
 さらに検察や警察と捜査分野がかぶった場合には高位公職者犯罪捜査処がすべてにおいて優先される、という怖ろしいもの。
 2017年の9月(大統領当選からわずか4ヶ月後)には以下のような記事が出ています。

「高位公職者犯罪捜査処」設置へ 捜査員最大122人=韓国(聯合ニュース)

 捜査対象は大統領、首相、国会議員、大法院長(最高裁長官)、憲法裁判所長、最高裁判事、憲法裁判官、広域自治体の首長など。

 政務職の公務員や高位公務員、判事・検事と高位の警察官、将軍級将校も捜査対象となった。現職ではなくても退任後3年未満の元高位公職者は捜査を受ける。高位公職者の配偶者や直系尊属・卑属、兄弟姉妹も含まれる。 

 捜査対象の犯罪も幅広く規定された。贈収賄、あっせん収財、政治資金の不正授受のほかにも、恐喝、強要、職権乱用、職務放棄、選挙関与、情報機関による政治への関与、秘密の漏えいなど高位公職者と関わる業務全般と関連した犯罪が対象となった。

(引用ここまで)

 パク・クネ政権にいた官僚や関係者を狙い撃ちにしようというのでしょう。
 この記事が出た2017年の時点では「3年未満の元高位公職者は捜査を受ける」という話でしたが、現状では5年に変更されているんじゃないでしょうかね。
 セウォル号事故調査委に捜査権と起訴権を持たせようとしていた夢がついに叶うってところですか。

 え、こんなものを作ってしまったら、政権が逆転されたら自分たちを苦しめることになるんじゃないかって?
 そうさせないための保守根切り政策ですよ。
 なんだかんだでムン・ジェインから最低でも3期くらいは共に民主党からの政権が続くでしょうね。
 なにしろ保守側に人材がいないのは間違いないので。
 この組織もそのために大いに働くことでしょう。
 最近出てきたパク・クネ政権の醜聞も設立に役立ちそうですね。曰く「就任演説からチェ・スンシルが介入していた」とのことですから。

 以前、楽韓Webで「かつて国家保安法にあれだけ苦しめられていた進歩系の政治家が、攻守が変わったら風刺ポスターを描いただけの大学生を国家保安法で取り調べするとかどうなってんの」という話を書いています。
 根本的に勘違いしてました。
 彼らは自分たちがやられていやだったことを、数倍の規模にしてやり返そうとしているのですよ。
 要するにこの組織の設立というのは「自分たちの意のままに動き、かつすべての権力を集約したもうひとつの検察」を作ろうとしているということに他ならないわけですから。
 ムン・ジェインの念願といっても過言ではないでしょうね。
Source: 楽韓Web